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高知地方裁判所 昭和60年(特わ)579号 判決

本籍

高知県安芸郡東洋町大字白浜七九番地の二

住居

右同

会社役員

小松玉男

昭和二五年九月一五日生

右の者に対する所得税法違反事件について、当裁判所は、検察官尾知山明出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、高知県安芸郡東洋町大字白浜八六番地五に事務所を設け、「小松啓作商会」の名称でつり糸製造販売業を営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を設定するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は八八、五七一、七五六円でこれに対する所得税額は五〇、七〇七、一〇〇円であったのにかかわらず、同五七年三月一三日安芸市矢の丸四丁目五番地所在の所轄安芸税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額は一〇、一一〇、二七七円で、これに対する所得税額は一、八五八、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同事業年度における正規の所得税額と右申告額との差額四八、八四九、〇〇〇円の所得税を免れ

第二  昭和五七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は三七、五九七、四一三円でこれに対する所得税額は一六、一九六、二〇〇円あったのにかかわらず、同五八年三月一四日前記安芸税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額は六三、〇九一円で、これに対する所得税額は零円で納付すべき所得税額がない旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同事業年度における正規の所得税額と右申告税額との差額一六、一九六、二〇〇円の所得税を免れ

第三  昭和五八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額は二四、九六八、一五七円でこれに対する所得税額は八、九三九、七〇〇円あったのにかかわらず、同五九年三月一四日前記安芸税務署において、同税務署長に対し、右事業年度における所得金額は八、八四四、三四二円でこれに対する所得税額は一、四一九、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同事業年度における正規の所得税額と右申告税額との差額七、五二〇、七〇〇円の所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

一  林けい子及び中山修作の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  中山修作作成の申述書

一  西谷操(二通)、西川憲一(二通)及び中島征代作成の各証明書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二通(P/L勘定及びB/S勘定)、売上除外金明細書、取引内容照会に対する検討明細書、売上被振込金額調査書、手形取立調査書、公表売上金額の検討明細書、臨検てん末書五通及び検査てん末書

一  国税査察官作成の査察官報告書三通

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五六年一月一日至昭和五六年一二月三一日)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五七年一月一日至昭和五七年一二月三一日)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五八年一月一日至昭和五八年一二月三一日)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、判示第一の所為はその免れた所得税の額が五〇〇万円をこえるので、情状により同条二項を適用し、各所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については当法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一六〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 高野裕)

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